コイントスで作ったチャート
下の図は実際の相場ではありません。硬貨を投げて表なら1%上げ、裏なら1%下げることを6回繰り返して足を1本作り、そうして作った足をつなげました。こうした値動きを約2万通り作り、その中からヘッドアンドショルダーのように見えるものを選びました。左肩と頭、右肩、ネックラインがあり、ネックラインの下に抜けたあと、しばらくさらに下がります。ローソク足パターンも含まれていて、この講座の定義で探すと、図に見える足のうちハンマーが3つ、強気の包み線が7つ見つかります。硬貨は前の結果を覚えていないので、この形には何の原因も、先行きについての情報もありません。
例:コイントスで作った価格です(実際の相場ではありません)。足1本は硬貨6回分(表+1%、裏−1%)です。こうした値動きを約2万通り作り、その中からヘッドアンドショルダーのように見えるものを選びました。
過去のチャートからは何でも見つけられる
完成したチャートでは、パターンははっきりしています。しかし、その形ができていく間は右側が空いています。下の図は、同じ価格を右肩のあたりで切ったものです。この時点では、ネックラインの下に抜けるのか、再び上がって頭を超えるのか、横ばいに流れるのかは分からず、後の2つの場合なら、この形はヘッドアンドショルダーという名前をもらえません。上の図を2万通りの中から選んだように、見るチャートが多ければ、教科書のような形はどこかに現れます。多くの銘柄と多くの足の長さを見て回ることも同じで、本や記事に載るパターンの例も、結果を知ったあとでよく当てはまるものが選ばれがちです。過去のチャートで説明することと、前もって当てることは別のことです。
例:上と同じコイントスの価格を、右肩のあたりで切ったものです。この時点では右側が空いていて、どんな形になるか分かりません。
確証バイアス:当たった記憶だけが残る
確証バイアスは、すでに持っている考えに合う情報をよく見て、長く覚えている傾向です。パターンのあとで予想どおりに動いたチャートは記憶に残り、何も起きなかったチャートや反対に動いたチャートはすぐに忘れられます。指標をいくつも表示しておくと、いつでも上がる根拠と下がる根拠が両方あるので、望むほうだけを選んで見がちです。このバイアスを減らすには、判断を前もって書いておき、当たったものと外れたものを同じ重さで数えてみる方法があります。
生存バイアス:聞こえてくるのは成功談だけ
チャートで大金を稼いだという話は広く伝わりますが、同じ方法で損をした人はたいてい黙っています。聞こえてくる事例だけで方法の成績を推し量ると、実際より良く見えます。コインも同じで、いまチャートを見られるコインは生き残ったコインです。この講座の測定も、いま取引されている10銘柄だけを使ったので、このバイアスから自由ではありません。消えたコインを除いて戦略を試すときに生じる問題は、「バックテスト結果の読み方」の記事で詳しく扱います。
誰もが知っているルールは先に織り込まれるという考え
ハンマーやゴールデンクロスのように誰もが知っているルールが本当によく当たっていたなら、多くの人がシグナルが出る前から動いたはずです。そうなると、シグナルが出たあとに残る取り分は減ります。市場がいつも正しいという主張ではなく、誰でも無料で知ることのできるルールに大きな優位が長く残り続けるのは難しい、という考えです。手数料と不利な約定価格まで加えると、小さな優位はさらに消えやすくなります。すべての場合に当てはまると証明された考えではありませんが、少なくとも下に書くローソク足パターンの実測とは食い違いません。
この講座で実際に測ったこと
この講座は、バイナンスの10銘柄の日足29,946本(上場日〜2026年9月22日)で、パターンと指標のシグナルのあとの価格を測りました。基準は、すべての足の5本後の上昇割合50.5%です。ローソク足パターン9種のあとは46.7〜55.3%で、すべて基準から5ポイント以内に収まり、上昇のシグナルとして紹介される4つ(ハンマー・強気の包み線・明けの明星・赤三兵)のうち3つは基準より低くなりました。指標のシグナルには差の大きいものもありましたが、下落のシグナルとされるデッドクロスのあとに上がった割合がむしろ高かったように、教科書と反対の方向のものが混じっています。また、連続して出たシグナルを1つずつ数えたので、標本は互いに独立ではありません。RSI(14)が30未満の足の5日後の上昇割合も、対象によってBTCの日足(5本後)で62.3%(基準53.1%)、BTCの4時間足(30本後)で52.6%(基準52.8%)と違いました。下のリストは10銘柄の日足の5本後です。
- RSI(14)が30未満の足1,087本:5本後58.6%
- 終値がボリンジャーバンド下限を下回った足1,516本:5本後56.8%
- デッドクロス(SMA50がSMA200を下抜け)88回:5本後69.3%
- MACDがシグナルを上抜け1,055回:5本後50.5%
それでもチャートが役に立つところ
先行きを当てるのが難しいからといって、チャートが役に立たないわけではありません。チャートは、これまでに何が起きたかを最も速く要約して見せてくれ、その資産が普段どれくらい大きく動くかも測れます。また、前もって立てた計画を守るのにも使えます。どの価格になったら判断が間違っていたと認めるかをチャートの上で決めておけば、そのときの気分ではなく、前もってした約束に従って動けます。
- これまでの流れの要約:トレンド・レンジ・主要な価格帯
- リスクを測る:ボラティリティ(ATR)、損切り位置までの距離
- 計画を守る:書いておいた条件と実際の行動を比べる
- 間違いの地点を決める:判断を取り下げる価格
自分の判断を基準線と比べる
自分のチャートの読みが偶然より優れているかを確かめる最も簡単な方法は、結果を数えてみることです。チャート予想クイズは、銘柄名と日付を隠した実際の過去のチャートを見せて、10本後の終値が上がるか下がるかを選ばせたあと、正解率を、同じ答えだけを選び続けた場合の正解率(当てずっぽうの基準)と並べて表示します。問題数が少ないと偶然の幅が大きいので、何度も解いてから判断するほうがよいでしょう。ルールとして書ける戦略なら、バックテスターで過去の足に当てはめて動かしてみるのも同じ目的です。
この記事が言っていないこと
この記事は、チャート分析がすべて役に立たないとか、チャートでお金を稼いだ人がみな運が良かっただけだとは言っていません。この講座の測定は、決まった定義と10銘柄、一つの期間についてのもので、複数の条件を重ねた方法やほかの市場は測っていません。言いたいことは限られています。形ひとつ、シグナルひとつで先行きが分かると感じるとき、その感覚がどれほど簡単に作られるかを知っておき、確かめられることは数字で確かめたほうがよい、ということです。
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